
ドライアイは、コンタクトレンズを使用する人やパソコン・スマートフォンを凝視する機会が多い人によく見られる疾患です。
軽度のドライアイの代表的な症状は目の不調や視界不良ですが、重度になると角膜や結膜が傷つき、間接的に頭痛や肩こりなどの全身症状を伴う可能性があります。
よくある疾患と油断をせず、気になる場合は早めに眼科を受診することが大切です。
この記事では、ドライアイを放置するリスクや、受診の目安を紹介します。
慢性的なドライアイに悩まされている人や、頭痛や肩こりを感じやすい人は参考にしてください。
ドライアイの症状

以下の症状がある場合は、ドライアイである可能性があります。
- 目が乾く
- 目がしょぼしょぼする
- 目が痒い・痛い
- 目に異物感がある
- 目が疲れる
- 目が充血する
- 目がかすむ、見づらい
- 白っぽい目やにが出る
- 光が眩しい
- 何もしていないのに涙が出る
ドライアイは、目が乾く以外にもさまざまな症状を伴います。
涙の量が不足したり、成分のバランスが崩れたりすることでドライアイになると、角膜や結膜が傷や炎症を伴い、視界がかすむ・光が眩しいと感じる原因になります。
目の最も外側にある角膜上皮は傷つきやすく、通常であれば損傷してもその都度自己回復する力がありますが、涙が不足すると修復が行えません。
その結果、痛みや充血などの症状を引き起こす可能性があります。
ドライアイは、実際のものの見え方に関係する実用視力を低下させるとされていて、視力が落ちたと感じるケースもあります。
ドライアイが原因で実用視力が低下していた場合、治療を行うことで目が見えやすくなり、視力が回復したようになる可能性が高いです。
ドライアイが重症化するとどうなる?

ドライアイが重度になると、以下の問題を引き起こすリスクがあります。
痛みで目が開けていられなくなる
ドライアイによる痛みがひどくなると、目を開けていられないほどの状態になる可能性があります。
痛いだけではなく、目が思うように使えないことで日常生活に支障をきたし、ストレスへのつながりも懸念されます。
開眼が困難になるほどの痛みを伴う前に対処することが大切です。
自律神経が乱れる
重度のドライアイは、自律神経の乱れを引き起こすリスクがあります。
ドライアイによって生じる不調はQOLを低下させ、精神的な負担につながることで自律神経の乱れにつながります。
集中力を低下させ、勉強や仕事へ悪影響を及ぼす危険性があるため、早めの改善が重要です。
頭痛や肩こりの原因になる
ドライアイが重症化すると、頭痛や肩こりを引き起こす場合があります。
ドライアイが目に異常をきたすと肩こりにつながり、ストレスを蓄積する原因になります。
このストレスが片頭痛や緊張性頭痛を引き起こすと、全身の疲労感を伴う可能性があるため、最近疲れやすいと感じる場合はドライアイが原因かもしれません。
角膜や結膜を損傷する
重度のドライアイは角膜や結膜の損傷につながるため、放置は禁物です。
ドライアイが原因で失明するリスクはほとんどないとされていますが、角膜や結膜に傷がつくと角膜炎や結膜炎になる恐れがあります。
放置すると眼機能に悪影響を及ぼすリスクが懸念されるため、早めに対処することが大切です。
実用視力が低下する
ドライアイが重症化すると、実用視力が低下する可能性があります。
実用視力とは、視力検査で測定する視力とは異なり、生活するうえで実際に感じるものの見え方です。
視力検査で一般的に用いられるCの形をした記号の切れ目がどこを向いているか、ではなく、生活する上での風景がどう見えるかを表しています。
視力検査で結果として現れる視力と異なり、実用視力は周囲の環境や自身の状況によって変わるため、同じものを見る場合でも見え方が異なるケースがあります。
実用視力が低下すると、見えたものを瞬時に判断しなければいけない運転や、薄暗い場所でものを見る場面に影響する可能性があるため、ドライアイは重症化する前に改善することが重要です。
ドライアイの検査方法

ドライアイは、以下の方法によって検査を行います。
シルマー検査
シルマー検査は、涙の分泌量を調べる検査です。
目盛りが刻まれた検査専用の濾紙を瞼の涙点部分にはさみ、5分間でどれくらいの涙が染み込むかを測定します。
簡易的に行える試験でかかる時間が少なく、検査結果が明瞭に判断できるため、基本的にはどこの眼科でも用いられている一般的な検査方法です。
濾紙の濡れる幅が10mm以上だと正常で、5mm以下だとドライアイの疑いがあります。
細隙灯顕微鏡検査
細隙灯顕微鏡検査では、スリットランプと呼ばれる顕微鏡を用いて角膜や粘膜についた傷の有無や状態を調べます。
特殊な染色液を点眼すると、角膜や結膜の傷や凹凸が染まって見えるため、さらに詳細に状態を把握することが可能です。
細隙灯顕微鏡検査は、目の表面だけではなく眼底の極周辺部や虹彩根部の隅角の観察も可能で、全身疾患や外眼部の疾患を発見するのにも有効です。
虹彩炎や白内障、後部硝子体剥離などの疾患は、この検査でしか発見・経過観察ができないとされています。
BUT検査
BUT検査は、涙の層の安定性を把握して乾きやすさを判断する検査方法です。
BUTとは涙液層破壊時間のことを指し、10秒間まばたきをせずに目を開けた状態にして、表面に張られた涙の層が何秒で破壊されるかを測定します。
BUTが10秒以上だと正常で、5秒以下だと涙の安定性が低いため目が乾きやすく、ドライアイと診断される可能性があります。
ドライアイの治療法

ドライアイの治療法には、足りない涙を点眼薬で補う方法や、涙点をプラグで閉鎖する方法、マイボーム腺の機能を正常にする方法などがあります。
具体的な治療法は以下の通りです。
点眼治療
ドライアイの治療で基本的に最初に選択肢されるのは、点眼薬による治療です。
ドライアイは現時点では完治することはない疾患とされていますが、点眼薬を使用することで症状の緩和に効果が期待できます。
ドライアイの治療に用いられる点眼薬にはさまざまな種類があり、患者さんのドライアイのタイプに合わせて選択が可能です。
涙点プラグ
重度のドライアイでは、涙点プラグを用いた治療を行う場合があります。
涙点プラグとは、涙が流出する涙点と呼ばれる穴にプラグを差し込み、目に涙を留まらせることでドライアイを予防する治療法です。
涙によって目の潤いを保てるほか、点眼薬が目にとどまることで効果を発揮しやすくなるメリットがあります。
涙点は瞼の上下に存在するため、ドライアイの症状が重いときは両方閉塞することで効果が改善する場合も多いですが、涙点を2つ塞ぐことで反対に涙が溢れるケースもあります。
シリコン製の涙点プラグは、擦ったり衝撃を与えたりすると抜けてしまう恐れがあるため注意が必要です。
また、プラグの代わりにコラーゲンでできたゲルを流し込み、涙が流れ出るのを防ぐ方法もあります。
痛みや不快感が少ないですが、時間が経過すると消失するため、一定期間のみのドライアイ対策や、シリコン製の涙点プラグを使用する前に試用するなどの使い方ができます。
IPL光線療法
IPL光療法は、IPL治療器を用いてマイボーム腺(まぶたの縁にある皮脂腺)を刺激することで働きを改善し、ドライアイの解消を目指す治療法です。
点眼治療や涙点プラグでもドライアイの症状が良好にならない患者さんに適しています。
痛みやその他の副作用が少なく、温熱効果で血行促進・炎症緩和を行うことで、マイボーム腺の詰まりによるドライアイの改善に効果が期待できます。
ドライアイの治療に用いられる点眼薬の種類

ドライアイの点眼治療では、複数種類の点眼薬を症状や状態に合わせて選択します。
使用される点眼薬の種類は以下の通りです。
人口涙液
人口涙液は、涙と同等の塩分濃度である生理食塩水に薬剤を添加している点眼薬で、目に水分を与え乾燥から守る役割があります。
防腐剤無添加のものを市販で購入できるため、手軽にドライアイ対策ができるのがメリットです。
過度に使用すると涙の有効成分を流出させてしまうため、主な治療法として使用するのではなく、洗眼やアレルギー対策としての使用が推奨されます。
ヒアルロン酸製剤
ヒアルロン酸製剤は、ドライアイの点眼薬として選択されることが多く、目の粘膜の表面にできた細かい傷を補修する効果があります。
保湿効果が高いですが、特有の粘性があるため、アレルゲンが付着しやすいのがデメリットです。
そのため、アレルギー性結膜炎の患者さんにはあまりおすすめできません。
ジクアス
ジクアスは、水分を付与する効果と乾燥を防ぐ効果のあるムチンの分泌を促進する点眼薬です。
継続して使用することで内部からのドライアイ改善が期待できるため、症状の強い・弱いに関わらず選択されます。
副作用でしみたり、目やにがでたりすることがありますが、角膜の修復やムチンの分泌促進などが原因で現れる症状であるため、心配いりません。
ムコスタ
ムコスタは、粘膜に働きかけることで胃炎や胃潰瘍の治療に効果を発揮する薬を点眼薬にしたもので、ドライアイによる目の角膜や結膜の症状を軽減する働きがあります。
炎症性のドライアイに対して特に治療効果を発揮し、痛みや不快感を改善する作用があります。
防腐剤が無添加のため、コンタクトレンズを着用したままでも点眼できるのが特徴です。
フルメトロン
フルメトロンはステロイドの点眼薬で、目の粘膜の炎症を抑制する効果があります。
症状の強い重度のドライアイ患者さんに使用するケースが多く、こにし・もりざね眼科では、ヒアルロン酸点眼やムチン分泌促進効果のある点眼薬と併用して処方する場合があります。
慢性的な使用で眼圧を上昇させ、緑内障を発症するリスクが発生したり、免疫力の低下によって感染症のリスクを高めたりする副作用があるため、継続して使用する際は定期的に眼科を受診し、検査を受けることが必要です。
ドライアイの受診の目安

ドライアイはセルフケアが可能な疾患ですが、全身症状やストレスにつながる可能性があるため、以下のような状態の人は積極的に眼科を受診し、適切な処置を受けることが望ましいです。
ドライアイが慢性化している
ドライアイが慢性化している場合は、眼科の受診が推奨されます。
ドライアイは完治ができない疾患とされているため、市販の点眼薬を使用してドライアイの症状をしのいでも、応急処置の効果しかありません。
そのため、眼科で適切な治療を受けて症状を軽減しながら、根気強くつき合っていくことが大切です。
点眼薬の回数を増やさないと足りない
点眼薬を差す回数を増やさないと足りないと感じる場合は、眼科を受診しましょう。
点眼薬は、種類によって一日の適切な点眼回数や、回数の上限が定められています。
用量を守らないことで粘膜を傷付けたり、涙を流出させることでドライアイが悪化したりする可能性があるため注意が必要です。
また点眼薬を使用してもドライアイが改善されない場合は、他の病気を合併している恐れがあり、痛みがある場合は粘膜の傷による感染症のリスクが懸念されます。
その際は、むやみに点眼量を増やさずに眼科を受診しましょう。
点眼薬は市販のものを使用する方法もありますが、眼科でドライアイの状態や症状を診てもらったうえで適切な種類を処方してもらい、指示に従って用法・用量を守って使用するのが得策です。
日常生活に支障をきたす
ドライアイが日常生活に悪影響を及ぼしている場合は、眼科の受診を検討しましょう。
重度のドライアイは、頭痛や肩こりを引き起こし、自律神経のバランスを乱れさせます。
症状が軽度の場合でも、目が乾いたり疲れたりすることでストレスを感じ、生活の質の低下につながる場合があります。
ドライアイは、勉強や仕事に支障をきたす可能性が高いため、私生活で不便を感じる場合や、目の不快感がストレスになる場合は放置せずに眼科を受診しましょう。
まとめ
ドライアイが重症化した際のリスクや、受診の目安を紹介しました。
ドライアイを放置すると、目だけに留まらず全身に不調が現れる可能性があるため、早めに眼科医に相談することをおすすめします。
こにし・もりざね眼科では、細隙灯顕微鏡検査・BUT検査・シルマー検査によってドライアイを診断し、患者さんの状態に合わせた治療法を選択します。
また角膜や結膜の総合的な疾患を専門としているため、ドライアイだと思っていたら他の病気が隠れていた、という場合でも適切な治療が可能です。
気になる目の症状がある場合は、ぜひ一度ご相談ください。