
オルソケラトロジーとは、夜寝ている間に特殊なレンズを目に装着して、角膜の形状を変化させ、日中は裸眼で過ごせるくらいに視力が回復するという治療です。
近視の視力回復と、成長途中の子どもには近視の進行抑制の効果も期待できますが、いつまで続けるべきか、やめてもいいのか迷ってしまうかもしれません。
この記事では、オルソケラトロジーをやめる方に多い理由や、やめた後にどうなるかなどを詳しく解説していきます。
オルソケラトロジーの治療を始める前の方も、治療中の方も、やめるときの不安を解消する参考にしてください。
オルソケラトロジー治療とは?

オルソケラトロジー治療は、睡眠中にハードコンタクトレンズのような特殊なレンズを装着し、近視によって歪んだ角膜を特殊なレンズで抑えて平らにして、屈折率を調整する治療です。
角膜は弾力性があり、夜に癖付けされると日中も矯正された形状を保つため、裸眼で生活できるようになります。
オルソケラトロジーの適応条件
オルソケラトロジーには適応条件があり、治療を希望する方は適応検査を行い、医師の診断を受けます。
- 近視の度数‐4.00D程度(中等度近視)まで
- 乱視の度数‐1.50D以下
- 目の疾患がない
- 6~65歳くらいまでの年齢
角膜の形状や年齢により、適応条件外でも治療ができる場合もあるため、オルソケラトロジーの治療を考えている方は、1度適応検査を受けてみることをおすすめします。
オルソケラトロジーに向いている人
オルソケラトロジーには適応条件がありますが、それ以外にもどんな方にオルソケラトロジーが向いているかの傾向があります。
- 日中裸眼で生活したい方
- スポーツや対人競技を裸眼でしたい方
- メガネやコンタクトレンズの使用に不便を感じている方
- レーシックやICLなどの手術に抵抗がある方
- レンズケアや定期検査の通院ができる方
- 近視の進行を抑制したい方(子どものみ) など
オルソケラトロジーは日中裸眼で過ごせるため、裸眼生活のメリットを重要視する方に向いています。
レンズを装着するだけで手術が不要なため、手術が不安だったり、怖さを感じていたりする方にはオルソケラトロジーがおすすめです。
また、成長と共に近視が進行する子どもには進行抑制効果が期待できるため、将来の目の病気の予防や近視が強くなりすぎないように、オルソケラトロジーを選択する方も多い傾向があります。
オルソケラトロジーに向いていない人
適応条件に当てはまっていても、以下のような方にはオルソケラトロジーは向いていないため、治療を始める前に確認しておきましょう。
- ドライアイの症状が強い方
- 過去にレーシック手術を受けたことがある方
- 毎日のレンズケアや定期的な通院が難しい方
- 推奨されている6時間の装着時間(睡眠時間)が確保できない方
- 視力安定まで2週間~1ヶ月ほどかかるため、急いでいる方 など
治療を始めてから続けられなかったと気づく場合もありますが、事前に医師とよく相談してオルソケラトロジー治療に向いているかどうかを考えてみましょう。
オルソケラトロジーの注意点

オルソケラトロジー治療をする際には、以下のような注意点があります。
初診の際、医師からの説明をよく理解して疑問を解決したうえで、オルソケラトロジーが自分のライフスタイルに合っているかを考えてみましょう。
運転免許の取得・更新時は治療中の申告が必要
オルソケラトロジー治療をしている方は、運転免許の取得・更新時に「オルソケラトロジー治療中」という申告をしなければいけません。
治療をしていて日中の裸眼視力で視力検査に合格しても、『眼鏡等』の条件がつきます。
オルソケラトロジーは視力矯正をしているとみなされるため、『眼鏡等』の条件を外すには、オルソケラトロジーの治療を中止したうえで視力検査に裸眼で合格する必要があります。
また、オルソケラトロジーの治療中でも免許に必要な視力が出ていない場合は、裸眼で運転すると『眼鏡等』の条件違反となるため、注意してください。
ハロー・グレアが起こる可能性がある
夜間の街灯や信号などの光がにじんで見えたり、周りにモヤがかかってぼやけて見えたりする現象(ハロー)や、光がギラついてまぶしく見える現象(グレア)などが起こる可能性があります。
多くは治療を続けるうちに気にならなくなりますが、日常生活に支障をきたすほどの症状が続いたり、夜間の運転がしづらく危険を感じたりする場合は医師に相談してください。
症状の程度によっては、オルソケラトロジー治療を中止しなければならないかもしれません。
合併症を引き起こす可能性がある
オルソケラトロジーのレンズを正しく使用しなかったり、レンズの清潔が保てなかったりすると、通常のコンタクトレンズと同様にトラブルや合併症のリスクがあります。
オルソケラトロジーレンズは凸凹がある特殊な形状をしているため、しっかりレンズのこすり洗いをする必要があり、レンズケアが不十分だと角膜炎や角膜感染症を引き起こす可能性が高まります。
レンズケースは見落としがちですが、きちんと洗浄が必要で、約3ヶ月ごとに買い換えて清潔を保つのをおすすめします。
充血や痛みがある場合は、すぐにクリニックを受診してください。
医師の指導に従った正しい使用方法を守り、きちんとレンズケアをして清潔な状態を保っていれば、リスクを減らすことにつながります。
また、定期的に目の状態を確認するためにも、定期検査はきちんと受けましょう。
『オルソケラトロジーをやめる』とは?

オルソケラトロジー治療は、いつでもやめることができます。
ただし、クリニックによって価格の設定が違い、途中で解約した場合の返金額に差があるため、契約時にやめるときのこともしっかり確認しておきましょう。
ここでは、オルソケラトロジーをやめる際の疑問について解説していきます。
オルソケラトロジーを途中でやめたらどうなる?
手術が必要なく、レンズで角膜に癖を付けるオルソケラトロジーは、治療をやめたら角膜が元に戻ります。
治療をやめてレンズを装着しなくなると、約2週間〜1ヶ月で角膜の癖付けはなくなり、視力回復効果もなくなります。
徐々に裸眼で過ごすのが難しくなるため、メガネやコンタクトでの視力矯正が必要になるでしょう。
また、オルソケラトロジーをやめると、子どもの場合は近視の進行抑制がなくなり、そのままにしておくと近視が進んでしまいます。
6〜12歳の子どもに使用できるマイオピン(低濃度アトロピン)点眼治療という近視抑制治療の方法もあるため、クリニックで相談してみてください。
日常生活で近視を進行させないような工夫は、以下のようなものがあります。
- 目と対象の距離を30cm以上離す
- 近くを見るときは目を休ませる(スマホ、ゲーム、パソコン作業など)
- 1日2時間程度日光を浴びる時間をつくる
- 暗い場所で作業しない など
クリニックでの治療と同時に、生活の中でも近視をこれ以上進ませないように気を付けるのが重要です。
オルソケラトロジーを1回やめた後に再開できるのか
過去にオルソケラトロジーをしていて、途中でやめた経験があっても、再開したい希望があればいつでも再開できます。
ただし、再開する前には再度適応検査を行い、角膜の状態の確認や目の状態が変化しているか、視力が変わっているかなどの結果を医師が診断して、再開できるかを判断します。
例えば、オルソケラトロジーを中断している間に視力が落ちて適応条件から外れてしまった場合は、再開が難しくなる可能性もあります。
また、オルソケラトロジーをやめるときにはレンズを返却する必要があるため、クリニックの料金体系によっては再開時に改めてレンズ費用がかかる場合もあります。
やめる前や再開を決める際には、費用についてもクリニックに確認しておきましょう。
オルソケラトロジーをやめる理由は?

オルソケラトロジーはメリットが多いように感じますが、やめる選択をする方もいて、その理由はさまざまです。
やむを得ない事情があったり、ライフスタイルに合わなかったりして、やめる方もいます。
ここでは、オルソケラトロジーをやめるときによくある理由について、詳しく解説していきます。
トラブルによる中断
オルソケラトロジーによるトラブルは、合併症やアレルギーなどがあり、トラブルがあった場合は医師の診断によりオルソケラトロジーの治療を中断する可能性があります。
充血だけなら数日休めば回復することも多いです。
しかし、角膜炎や角膜感染症になってしまったら、症状によってはオルソケラトロジーを中断して合併症の治療に専念しなければならなくなるでしょう。
合併症を防ぐためには、正しいレンズの使用とレンズケア、レンズの管理が重要です。
きちんと使用して清潔を保っていれば、トラブルを避けられる可能性が高まります。
また、アレルギーによる反応は人それぞれで、アレルギー性結膜炎を発症している場合は程度によりますが、オルソケラトロジーを続けられない可能性もあります。
オルソケラトロジー治療中に少しでも目に違和感があったときは、すぐにクリニックを受診しましょう。
オルソケラトロジーが合わなかった
オルソケラトロジーがライフスタイルに合わない、思っていたのと違ったなどの理由でやめる方もいます。
- 定期検査に通うのが難しい
- 毎日のレンズケアができない
- 6時間以上の睡眠時間がとれない
- 思ったより視力が回復しなかった など
オルソケラトロジーでは、安定してからも約3ヶ月ごとの定期検診で通院が必要だったり、毎晩レンズを装着して外してからのケアが必要だったりして、やってみたら自分の生活に合わなかった方もいるでしょう。
睡眠時間を確保するのも、進学や職場環境などが変わると難しくなってしまう場合もあるかもしれません。
また、オルソケラトロジーによる視力回復効果がどれくらいかは個人差が大きく、思っていた効果が得られずやめる選択をする方もいるでしょう。
年齢が上がって抑制を終えた
オルソケラトロジー治療の目的が、子どもの近視の進行抑制だった場合、成長期が落ち着いて近視の進行が止まる頃にオルソケラトロジー治療をやめる方もいます。
高校生頃になると成長が止まるという理由と共に、睡眠時間の確保が難しくなったり、毎日の装着やケアが難しくなるという理由も挙げられます。
近視の進行が止まらない可能性もあるため、やめるタイミングは医師と相談して決めましょう。
また、日中裸眼で過ごしたいから継続するという選択をする方もいて、年齢でやめなければいけないというわけではありません。
老眼で視力が安定しない
40歳を過ぎると老眼が始まり、オルソケラトロジー治療による矯正視力が安定しなくなって、治療をやめる方もいます。
オルソケラトロジーは裸眼で遠くが見えるようになる治療のため、目のピント調節力が弱まる老眼になると、近くが見えづらくなってしまい、不便を感じる可能性があります。
老眼の症状が出てきた場合、オルソケラトロジーのレンズを変更して調整したり、手元用のメガネを併用したりして治療を継続するか、治療を中止して他の矯正方法に変更するか、医師と相談してください。
大人の場合は、レーシックやICLなどの視力回復手術を検討するのも選択肢の一つかもしれません。
まとめ
オルソケラトロジーは、レンズを装着しなくなってから2週間〜1ヶ月で角膜が元に戻り、視力回復の効果も元に戻ります。
いつでも元の状態に戻れるというのは、オルソケラトロジーのメリットでもあります。
ただし、オルソケラトロジーをやめた後は、日常生活に支障がないようにメガネやコンタクトレンズで矯正をしなければなりません。
近視の抑制をしたい方は、マイオピン(低濃度アトロピン)点眼の検討をしたり、近視をこれ以上進行させないように気を付けたりして生活しましょう。
近視に悩んでいる方は、1度クリニックへ相談してみてください。
こにし・もりざね眼科は、オルソケラトロジーやマイオピンによる近視の進行抑制治療にも対応しています。
目に関することをなんでもご相談いただけるように、お子様から大人まで、人と人として向き合い、あたたかい治療ができるよう心がけております。
オルソケラトロジーを検討している方や、近視の抑制に興味のある方は、こにし・もりざね眼科へお気軽にご相談ください。