
オルソケラトロジーは、夜寝ている間にレンズを装着することで近視の視力回復ができて、日中裸眼で過ごせる治療です。
メガネやコンタクトレンズを使わず、手術の必要もなく裸眼で過ごせるのは、近視に悩む方からすると魅力的なのではないでしょうか。
しかし、何歳からオルソケラトロジー治療を受けられるのか、何歳まで続ければいいのか、疑問もあるでしょう。
この記事では、オルソケラトロジーの年齢制限について、子どもの場合と大人の場合を詳しく解説していきます。
オルソケラトロジーとは

オルソケラトロジーとは、睡眠中に特殊なレンズを装着して近視で歪んだ角膜を平らに癖付けし、屈折率を調整する治療です。
日中は癖が付いた状態を保つことで裸眼で過ごせます。
ただし、すべての人が受けられる治療というわけではなく、適応条件に合わなかったり、メリットよりもデメリットが上回ると感じたりする場合もあります。
ここではオルソケラトロジーの効果や費用、メリット、デメリットなども解説します。
オルソケラトロジーの効果
オルソケラトロジーのレンズを装着して角膜形状を平らにすることにより、日中の視力回復効果が期待できます。
長期間使うほどに、癖付けされている時間が長くなり、視力が回復して裸眼で過ごせる時間も長くなります。
ただし、毎日の装着が必要となるため、装着しない日が続くと視力は元に戻ってしまいます。
レンズ装着を始めて約2週間〜1ヶ月後には安定して、オルソケラトロジーの視力回復効果を実感できるでしょう。
また、成長と共に近視も進行してしまう子どもの場合は、近視の進行抑制にも効果が期待できます。
近視になる時期が早いと成長に伴って症状が進んで、将来的に近視が強くなりすぎてしまう可能性があるため、早い時期に近視抑制治療を検討するのが重要です。
費用
オルソケラトロジーは保険適用外のため、自費診療となります。
クリニックごとに価格が違いますが、初期費用の相場は約15万〜20万円です。
初期費用には以下のものを含みます。
- 初診・適応検査
- テスト装用
- 本治療(レンズ費用)
- 定期検査(安定後は約3ヶ月ごと)
- レンズケア用品 など
クリニックによっては毎月決まった支払額を設定している定額制を取り入れていたり、それぞれ別の支払いが発生したりとさまざまです。
年間の総額がいくらになるのかを事前に確認しましょう。
適応条件
オルソケラトロジーは適応条件があり、治療を始める前に適応検査が行われます。
- 6~65歳くらいの年齢(医師の診断により変わる可能性もある)
- 中程度の近視(-4.00D)まで
- 軽度の乱視(-1.50D)以下
- 角膜の疾患がない など
基本的にはオルソケラトロジーレンズが装着できる年齢なら治療ができますが、クリニックによっては年齢制限があるため、確認しておきましょう。
近視や乱視は、オルソケラトロジーの効果が感じられる度数が目安になります。
適応条件から外れていても、レンズの種類や効果の出方により適応する場合もあるため、適応検査をして診断を受けてください。
角膜に関する目の疾患がある場合は適用外になりますが、病気の治療後にオルソケラトロジー治療ができる可能性もあるため、医師に相談してみましょう。
また、オルソケラトロジーは手術は必要なく、レーシックやICL手術に抵抗がある方にも向いています。
メリット
オルソケラトロジーのメリットは、以下のようなものがあります。
幅広い年齢に対応 | 6~65歳(医師の診断による) |
裸眼で生活できる | 毎日の睡眠時にレンズを装着 学校や職場では裸眼で生活できる |
手術が必要ない | レンズの装着のみで視力が回復する |
激しい運動に制限がない | スポーツや対人競技を裸眼でできる |
元の状態に戻れる | 治療をやめれば角膜が元の状態に戻り、視力も戻る |
着け外しの手間が少ない | メガネは見たい距離によって着け外す必要がある コンタクトレンズは目にゴミが入ると外して対処する場合がある |
オルソケラトロジーのメリットはいくつかありますが、日中にメガネやコンタクトレンズを着けなくても裸眼で過ごせるというのは、近眼の方にはメリットとして大きいのではないでしょうか。
スポーツではメガネやコンタクトレンズの使用が制限されている場合もあり、裸眼で参加できるのは重要なポイントです。
また、レンズの装着をやめて2週間〜1ヶ月ほどすると角膜の状態が元に戻るため、将来の選択の幅が広がります。
デメリット
オルソケラトロジーのデメリットは、以下のようなものがあります。
定期的な検査が必要 | 視力が安定してからも約3ヶ月ごとの定期検査のために通院する |
費用が高額 | 自費診療のためクリニックにより価格が違う |
毎晩のレンズ装着 | レンズを装着しない日が続くと視力が戻ってしまう |
睡眠時間の確保が必要 | 角膜の形状を癖付けするために、睡眠時間は6時間以上を推奨 |
レンズケアが必要 | 朝レンズを外した後に、洗浄や保存をする手間がある |
リスクの可能性 | ハロー・グレア(夜間に光がにじんで見える、まぶしく感じる) 合併症のリスク(正しい洗浄と定期検査でリスクは少なくできる) |
他の視力回復手術と比べたら安いと感じるかもしれませんが、オルソケラトロジーは15万〜20万円の初期費用と、治療を続ける間の定期検査やレンズケア用品の費用もかかります。
毎晩のレンズ装着やレンズケアを手間に感じたり、睡眠時間の確保や定期検査に通うのが難しかったりする方は、オルソケラトロジーに向いていないかもしれません。
また、リスクをしっかり理解して治療を行うのが重要です。
ハロー・グレアは治療を続けていると気にならなくなることも多いですが、運転や日常生活に支障がある場合は医師に相談してください。
合併症のリスクは、レンズを清潔に保つ正しいケアをして、装着方法を守っていれば回避できる可能性も高くなります。
定期検査をきちんと受けて、目の状態をチェックするのはリスクを減らすためにも大切です。
子どものオルソケラトロジー

オルソケラトロジーは、子どもの視力回復や近視の進行抑制にも効果が期待できます。
ここでは具体的にいつからいつまで治療が続くのか、注意点なども解説します。
オルソケラトロジーは子どもに向いている?
オルソケラトロジーが子どもに向いているのは、角膜が柔らかく矯正の効果が出やすいという理由が挙げられます。
個人差もありますが、角膜の癖が付きやすい子どもは、視力の回復効果が期待できるでしょう。
また、睡眠時間を長く確保しやすいことも、理由の1つです。
年齢が上がるほど睡眠時間が短くなる傾向があり、オルソケラトロジーに必要な6時間以上の睡眠をとるのが難しくなってしまいます。
子どもの近視は低年齢化していて、小学校入学前から近視になるケースも増えています。
親御さんが気づく以外にも、保育園や幼稚園、自治体で行われる健診で近視の疑いがあるとされる場合も多くみられます。
オルソケラトロジーの効果が出やすい子どものうちに、治療を始めるのがおすすめです。
近視の進行抑制
近視は眼軸(目の奥の長さ)が伸びて眼球が大きくなるのが原因で、成長期には眼球も大きくなって近視が進行しやすくなるため、なるべく進行を遅らせるのが重要です。
成長期までにオルソケラトロジー治療をすることにより、近視の進行を抑制する効果も期待できます。
早い時期から近視になると、身体の成長と共に近視も進行して将来強い近視になりやすく、不便を感じたり目の病気になったりするリスクが高まります。
1度近視になると治ることはないため、なるべく早いうちに進行抑制治療を行うのが効果的です。
何歳から始められる?
オルソケラトロジーは適応検査に問題がない場合、6〜65歳頃が対象です。
ただし、クリニックによっては開始年齢が10歳以上と決まっていたり、5歳からを対象にしていたりと差があるため、事前に確認しておきましょう。
年齢が低いとレンズを1人で装着できない、ケアが不十分になるなどの心配がありますが、大人がサポートしてレンズの装脱着や清潔を保つための管理ができれば、適応とされる場合もあります。
何歳まで続ける?
オルソケラトロジーを何歳まで続けるかは、人それぞれ違います。
近視の進行抑制を目的としている場合は、成長が落ち着いて近視の進行が止まる18歳頃までを一区切りにするケースが多いです。
20歳前後になると、睡眠時間の確保が難しくなったり、毎日のレンズ装着やケアを手間に感じたりすることもあるため、本人の意思を確認した方がいいでしょう。
裸眼で過ごせる快適さを優先したいという場合は、そのまま続ける選択肢もあります。
ただし、近視の抑制効果がどれくらいかは個人差があります。
オルソケラトロジー治療をしていても近視が少しずつ進んで適応度数(-4.00D)を超えてしまった場合は、18歳頃までオルソケラトロジーの治療を続けられない可能性もあります。
マイオピン(低濃度アトロピン)との併用
近視の進行を抑制する治療として、マイオピン(低濃度アトロピン)の点眼治療があります。
6〜12歳の子どもで中等度の近視、軽度の乱視までが対象です。
毎日夜寝る前に1回点眼すると、眼軸(目の奥の長さ)の伸びを抑制する効果が期待できますが、効果には個人差があります。
オルソケラトロジーとマイオピン点眼の併用は、対応していないクリニックもあるため事前の確認が必要です。
また、2年以上の長期治療が前提となっていることや、自費診療で医療費控除の対象ではないなどの注意点があるため、希望に合っているかを医師とよく相談しましょう。
注意点
子どものオルソケラトロジー治療は、以下のようなことに注意しましょう。
- 低年齢で始めるほど大人のサポートが必要
- 正しいレンズケアを行う
- 定期検診を受ける
- 視力回復や進行抑制についてきちんと理解できるよう話す
- やめるときは本人の意思を聞く など
毎日のレンズ装着は、子どもにとって負担になる場合があります。
最初はレンズを装着するのも時間がかかるかもしれませんが、慣れるまでは装脱着を大人がサポートしましょう。
合併症を防ぐためにも正しいレンズケアは重要です。
洗浄や保存、タンパク質除去、レンズケースの洗浄など、ケア方法を親御さんがしっかり管理してください。
子どもがレンズを扱える年齢になっても、汚れていないかを定期的にチェックしましょう。
学年が上がって習い事や塾などで忙しくなっても、定期検査を受けるのは忘れないようにしてください。
レンズの状態を確認する他にも、目の状態の検査をしてレンズが合っているかは大事なチェック項目です。
また、どうしてオルソケラトロジー治療をするのか、きちんと話し合って子どもが納得していれば続けやすくなります。
治療をやめるタイミングを考えるときも、子どもの意思を尊重しましょう。
オルソケラトロジーのメリットを優先して、続けたいという場合もあります。
大人のオルソケラトロジー

大人の場合は近視の進行が止まっているため、近視の進行抑制効果はほとんどなく、視力回復の目的で行われます。
成長が止まって眼球や角膜の形状も決まっていることから、効果の出方に個人差が大きい傾向があります。
何歳から始められる?
大人のオルソケラトロジーは、適応条件に合っていて適応検査に問題がなければ、基本的に何歳からでも始められます。
ただし、オルソケラトロジーの効果は近視の視力回復のみとなり、老眼が始まる年齢になると近くが見えにくくなってしまうため、40歳以上の方は注意しましょう。
外に出るときは裸眼で過ごし、近くを見る作業をするときはピントを調節したメガネをかけたり、レンズの度数を弱める、使用頻度を変えるなど工夫をしたりすることで、オルソケラトロジーを使用できる可能性もあるため、クリニックへ相談してください。
何歳までできる?
子どもの場合と同様、オルソケラトロジー治療を止める年齢は人それぞれです。
オルソケラトロジーのレンズを装着している限りは、治療の効果は続きます。
老眼の影響で結局メガネをかける場面が増えて面倒になる方もいれば、日中の裸眼で過ごす快適さを手放したくないと続ける方もいます。
ただし、高齢になり自分でレンズの装着が困難になった場合は、オルソケラトロジー治療は難しくなるでしょう。
注意点
大人のオルソケラトロジー治療では、運転免許の取得・更新する場合に申告が必要なことに注意してください。
視力検査の際には、必ずオルソケラトロジーの治療中と申告してください。
日中の裸眼視力で0.7以上という合格基準に達していても、オルソケラトロジーの治療中は『眼鏡等』の条件がつきます。
『眼鏡等』の条件を外すには、オルソケラトロジー治療を完全に止めてから裸眼で視力検査に合格しなければなりません。
オルソケラトロジーの治療をしていても、免許に必要な視力が得られていない場合は、裸眼で運転すると条件違反となるため、注意してください。
まとめ
オルソケラトロジーは、子どもの場合と大人の場合、何歳から何歳まで治療ができるかが変わってきます。
クリニックによって適応年齢が違うため、事前に問い合わせて確認しましょう。
子どものオルソケラトロジーは、近視が弱いうちから始めて、近視を進ませないのが重要です。
将来の目の健康のためにも、近視抑制治療としてオルソケラトロジーを検討してみてください。
こにし・もりざね眼科では、オルソケラトロジーによる近視抑制治療に力を入れております。
お子様の近視抑制に悩んでいる親御様や、視力回復に興味のある方は、お気軽にこにし・もりざね眼科へご相談ください。