
近視になると、視力はどんどん悪くなってしまいます。
しかし、どうして近視が進むのか、いつまで進み続けるのかは知っていますか?
子どものうちは進みやすいのは知られていますが、進行が止まる年齢には大体の目安があります。
この記事では、近視の進行が止まる年齢や、進んだ場合の病気のリスクについて詳しく解説していきます。
子どもだけでなく大人も注意すべきリスクがあるため、ぜひ参考にしてください。
近視の進み方

近視とは、目に入った光線は網膜の上で焦点が合うはずが、手前で焦点を結んでいてピントが合わない状態のことを呼びます。
焦点が手前であればあるほど、近視が強くなり遠くが見えづらく、矯正が必要です。
小学校低学年から中学生頃に近視が始まり、成長と共に進行していきますが、最近は低年齢化して小学校入学前から症状が出る子どもが増えています。
早期に近視になると、将来的に強度近視や病的近視になるリスクが高まるため、進行を防ぐための治療をしなければなりません。
近視の種類
近視の主な原因は、眼軸(目の奥の長さ)が伸びすぎて、屈折異常を起こしてしまう軸性近視です。
屈折性近視という、角膜や水晶体が原因の屈折異常というケースもありますが、強い近視の場合は眼軸の長さが原因であることが多いです。
軸性近視と屈折性近視に加え、小学生くらいの子どもによくみられる仮性近視は、目を酷使したり目が疲れたりなどの原因により、一時的にピントを合わせにくくなっている状態の近視もあります。
ただし、仮性近視の場合は、目を休ませるなどの対策によりピントの調節機能が回復する可能性があります。
近視は屈折度数によって以下のように分類されます。
屈折度数 | どのように見えるか | |
弱度近視 | -0.5Dから-3.0D未満 | 矯正しなくても生活できる |
中等度近視 | -3.0Dから-6.0D未満 | 矯正すれば問題ない |
強度近視 | -6.0D以上 | 視力0.1以下で強い矯正が必要 |
また、メガネやコンタクトレンズなどで矯正可能な単純近視と、矯正が難しい視機能障害を伴い失明の原因になり得る病的近視にも分けられます。
近視はいつまで進行するか
近視は成長と共に眼軸が伸びることで進行するため、成長期に進行しやすく、体が成長を止める頃に近視も止まるのが一般的です。
18〜20歳頃に止まる方が多いですが、成長の度合いにより25歳くらいまで続く方もいます。
早く近視が始まった子どもの場合は、その分成長期に眼軸も伸びて近視が進んでしまい、将来的に強度近視になりやすく注意が必要です。
環境的な要因により個人差が大きいため、進行が遅くなったり、逆にどんどん進んでしまったりして、進行が止まったときの度数には差が出るでしょう。
成長期には近視が進みやすいため、メガネやコンタクトレンズが合わなくなり頻繁に交換が必要になるかもしれません。
また、強度近視(-6.0D以上)の場合は成人後も近視が進み続ける可能性もあるため、眼科で定期的な検査を受けてください。
成人後も油断できない
近視が止まると言われている25歳以降でも、近視が進むこともあります。
現代における電子機器の普及に伴い、スマホを見ている時間が長かったり、パソコンの画面を見続ける仕事をしていたりする場合は、成人後も近視が進行し続けることがあります。
成人後に近視を発症するケースもあり、子どもの頃に近視にならなかったからといって油断はできません。
また、度数の合っていないメガネやコンタクトレンズを使うのは、合わないピントを無理に合わせようとして目に負担がかかってしまい、近視の進行につながってしまいます。
近視の進みは止まっただろうと思い込んでいると、いつの間にか度数が合わなくなってしまっていることもあるため、定期的な視力検査を受けることをおすすめします。
ただし、強度近視や病的近視の場合は、年齢に関わらず近視が進行する可能性があるため、眼科で定期的な検診を受けましょう。
強度近視とは

強度近視とは、中等度までの近視よりも進み、眼軸が異常に伸びてしまった状態のことです。
正常な眼軸は24mmほどですが、強度近視は26.5mm以上となり、-6.0Dを超えると強度近視と診断されます。
遺伝的な要因に加えて環境的な要因により近視が進んでしまった場合に、強度近視になる可能性が高まると考えられています。
強度近視のリスクは?
強度近視になると、目の病気を発症する可能性が高まります。
- 網膜剥離
- 近視性牽引黄斑症
- 緑内障
- 白内障 など
網膜剥離や近視性黄斑症は、眼軸が異常に伸びて網膜が引っ張られて剝がれたり、前後や横に裂けたりすることによって引き起こされる病気です。
視力の低下や視野が歪む、または欠けるなどの症状があります。
緑内障は、眼圧が上がることにより視神経が圧迫されて、視野が欠けたり狭くなったりする病気で、慢性の場合自覚がないこともあるため、見え方が変わったことに気づかないこともあります。
白内障は、目の中にある水晶体が白く濁ってしまい、二重に見える、ものがかすんで見える、異常にまぶしく感じるなどの症状があり、手術が必要な病気です。
強度近視にはこのような病気のリスクがあり、視力を失う可能性もあるため、近視を進ませないように予防するのが重要となります。
病的近視とは

病的近視とは、屈折度数は問わず眼球自体が変形している状態のことです。
眼軸が伸びすぎて網膜や周辺組織が引き伸ばされて薄くなり、機能が低下することにより、病気のリスクが高まります。
個人差がありますが、歪む形状は眼球の後ろ側の変形が多く、一部だけが膨らんだり、後ろ側が潰れたりとさまざまです。
病的近視の症状
病的近視は、近視の程度は問わずに、眼球が変形しているかどうかで診断されます。
視力が落ちていないと、近視ではないからと見過ごしてしまう場合もありますが、視覚障害1級(失明)の原因疾患として第4位になるほど多い疾患です。
1位 | 緑内障 | 25.5% |
2位 | 糖尿病網膜症 | 21.0% |
3位 | 網膜色素変性 | 8.8% |
4位 | 病的近視 | 6.5% |
5位 | 黄斑変性 | 4.2% |
(参照:平成17年度厚労省 網膜脈絡視神経委縮症調査研究班報告書)
強度近視はメガネやコンタクトレンズの矯正ができますが、病的近視の場合は矯正しても視力が出せない場合があり、合併症を引き起こすと失明の可能性があります。
また、強度近視の次の段階が病的近視と決まっているわけではなく、強度近視が進行しても病的近視にならない方もいて、原因については研究段階です。
病的近視のリスク
病的近視では合併症を起こし、目の病気にかかってしまう可能性が高くなります。
合併症を防ぐには、眼科で検診を受けるのが重要です。
病変を見逃さないために、また視力の変化に気づくためにも、症状がなくても定期的な通院をおすすめします。
ここでは病的近視による合併症で起こる可能性のある病気について解説します。
近視性網脈絡膜委縮
近視により眼軸が異常に伸びすぎ、網膜と脈絡膜(網膜の下にある血管の膜)が引っ張られて薄くなり、委縮してしまう病気を近視性網脈絡膜委縮と呼びます。
自覚症状はほとんどなく、委縮が進行して黄斑(網膜の中心)に障害が出ると視力の低下により自覚することもあります。
しかし、自覚症状が出た時点では進行してしまっているため、失明の可能性も高いです。
また、近視性網脈絡膜委縮には有効な治療方法が確立されていないため、進行しないように抑制することが重要です。
近視性牽引黄斑症(近視性網膜分離症)
眼軸が伸びる際に前後の方向に伸びきれず、黄斑部の網膜剥離が起こると牽引性黄斑部網膜剥離、前後や横に裂けてしまうと近視性網膜分離症と呼ばれます。
病的近視による網膜の異常のことを、近視性牽引黄斑症と総称します。
初期は無症状なため自覚がない場合も多いですが、網膜の機能低下が進むと視力が落ちてきます。
症状が重くなると、黄斑部に穴が開く黄斑円孔や、網膜ごと剥がれてしまう網膜剥離などの重篤な合併症につながることもあり、失明の可能性が高まります。
進行度により手術が必要となる病気です。
近視性脈絡膜新生血管
眼球が伸びる病的近視では、網膜や脈絡膜が引っ張られて持続的に力がかかり続けます。
その刺激によって脈絡膜に新生血管という病的な血管ができて網膜に入り込み、増殖してしまう病気を近視性脈絡膜新生血管と呼びます。
新生血管は脆いため、出血を起こしたり、血液の成分が漏れたりして、網膜の腫れや網膜の中や下で水が溜まる現象を引き起こします。
突然の急激な視力低下や物が歪んで見えることで発症に気づくことも多く、早期の発見と治療が重要な病気です。
血管内皮増殖因子(VEGF)を阻害する、抗VEGF薬を硝子体注射する治療が行われます。
近視性視神経症(病的近視による緑内障)
病的近視により眼球の変形が起こり、視神経が引っ張られると視野が阻害されて、視野が欠ける症状が見られる合併症が近視性視神経症という病気です。
症状としては緑内障に似ていますが、原因が違うと考えられていて、病名で区別されています。
緑内障と同様に眼圧を下げて、神経への負担を減らす点眼治療などが行われます。
ただし、近視性視神経症はまだ研究段階の分野なため、欠けた視界を戻すというわけではなく、これ以上範囲を広げないようにする効果を期待するという治療です。
近視を進ませないために

強度近視や病的近視になると病気のリスクが高まるため、近視を進ませないというのが病気の予防になります。
特に、子どもの場合は低年齢で近視になると強度近視に進みやすいことから、近視の抑制が重要です。
環境的な要因を改善する
近視になったら回復することはないため、近視を遅らせる方法で進行しないようにするのが大切です。
近視を進ませないために、環境的な要因を改善していきましょう。
屋外活動
屋外に出て、1日2時間以上、最低40分ほど日光を浴びることで、近視の進行を遅らせることにつながると考えられています。
太陽光に含まれる光線は、近視の抑制効果が期待できます。
夏の直射日光による熱中症の危険や、アレルギーなどで日光を浴びるのが難しい場合は、日陰で短時間でも構いません。
また、紫外線予防グッズなどを使っても、1日中家の中にいるよりは近視の抑制効果はあります。
睡眠時間の確保
近視が強い子どもは寝る時間が遅かったり、睡眠時間が短かったりします。
夜にテレビやゲームなどの画面を暗いところで見るなど、近視が進みやすい環境を減らすようにしましょう。
また、昼に屋外の活動をすると体内のリズムが整って、夜にぐっすり眠れるようになる効果も期待できます。
早寝早起きや規則正しい生活を心がけると、近視が進行しにくい環境を作りやすくなるでしょう。
明るさを保つ
作業するときの部屋の明かりだけでなく、手元を照らす明かりも重要です。
勉強や読書の際は、追加の照明を用意しましょう。
LED電球で700〜1000ルーメン、蛍光灯で15〜20W、白熱電球で40〜60Wの明るさが必要です。
30cm以上の距離を取る
本や画面などの対象から顔までの距離を30cm以上空けましょう。
近くを見続けることで近視は進行してしまうため、適切な距離を空けなければいけません。
その際、正しい姿勢で背筋を伸ばして座るのも大事です。
崩れた姿勢のまま長時間目を酷使すると、左右差が出てしまう可能性もあります。
目を休ませる
長い時間同じところを見続けると、目の負担になり疲労が溜まってしまいます。
30分作業したら5分休み、目を休ませましょう。
このときに6m以上の遠くを眺めるようにすると、より効果的です。
室内でも2mほど離れた場所に視線を移すようにして、近くを見続けないようにしてください。
近視抑制治療
眼科での近視抑制治療としては、以下のようなものが挙げられます。
- オルソケラトロジー
- マイオピン(低濃度アトロピン)点眼 など
オルソケラトロジーとは、ハードコンタクトのようなレンズを睡眠中だけ装着することにより、角膜を平らに矯正して、昼間は裸眼で過ごせるという治療です。
毎日の装着とレンズの清潔を保つためのケアが必要となりますが、近視の抑制効果が期待できます。
マイオピン点眼は、毎晩1回の点眼で眼軸の伸びや近視の進行を抑える治療です。
6〜12歳が対象の治療となり、大人には対応できません。
ただし、どちらも保険適用外のため自費診療となり、費用がかかります。
また、効果には個人差があるため、医師とよく相談の上治療を選びましょう。
まとめ
近視の進行は成長期に著しく、ほとんどが25歳くらいまでで止まります。
しかし、最近はスマホやパソコンなどの画面を見続ける機会が増えて、成人後も近視が進む傾向にあります。
近視が進むと、強度近視や病的近視という、目の病気にかかってしまうリスクが高まるため、近視を進行させないことが重要です。
目に負担をかけてしまう環境を改善し、近視の抑制を目指しましょう。
また、近視になったら眼科での定期的な検診を受けて、必要なら近視抑制の治療を受けるのが効果的です。
目の病気になるリスクを減らし、近視を進ませない生活を心がけましょう。
こにし・もりざね眼科は、人と人とのつながりを大切に、患者様と向き合う治療を目指し、病気の早期発見、早期治療をして進行を防止できるように務めております。
近視の進行抑制治療として、オルソケラトロジーやマイオピンを取り扱っています。
近視について悩んでいる人や、進行の抑制をしたい人は、こにし・もりざね眼科へお気軽にご相談ください。