
近視に悩む人は多く、現代においては子どもから大人まで身近な問題です。
近視を予防したい、これ以上進ませたくないけれど、どうしたらいいのかわからないという疑問も多いでしょう。
近視になるのを予防し、悪化を防ぐためには『目に良くない環境を改善する』必要があります。
この記事では、近視になる理由から予防方法、悪化させない対策に加え、眼科ではどのような治療が行われるかを詳しく解説します。
近視になる理由

近視になる理由ははっきり解明されていませんが、遺伝的要因と環境的要因の両方が影響していると考えられています。
どちらか一方というよりは、複雑に絡み合って近視を加速させるようなイメージでしょう。
ここではそれぞれの要因はどのようなものがあるのか、解説していきます。
遺伝的要因
両親や祖父母など、血縁関係にある近親者からの遺伝子に近視になる要素が含まれていると、強い近視であればあるほど子どもに症状が出る確率が上がります。
両親どちらか、または両親どちらも近視の場合は症状が出やすいです。
小学校入学前から近視が始まる子どもの場合は遺伝のケースが多く、将来的に強度近視(‐6.0Dを超えている状態)や病的近視(眼底に病的な変化が起こる状態)になる場合があります。
近視以外の病気の可能性もあるため、早めに眼科を受診をしてください。
ただし、両親共に近視であったとしても、子どもは近視にならないケースもあります。
環境的要因
近視になりやすい環境的要因は、以下のようなものです。
- 手元ばかり見ている作業が多い
- 長時間の読書や勉強
- ゲームやスマホ、パソコンなどの電子機器を見続ける
- 暗い場所での作業が多い
- 屋内にいて日の光を浴びることが少ない など
近いところにピントが合っている状態が続くと、遠くを見ようとしてもピントが合わずにぼやけて見えてしまうことがあります。
一時的なものなら、目を休めて時間を置けば回復しますが、長く続いたり放っておいたりすると、近くにしかピントが合わない近視の状態になってしまうため注意しましょう。
目を酷使して疲れると眼精疲労の原因にもなり、目の充血や涙目、まぶたの痙攣などの症状が出てくる可能性があります。
眼精疲労が進むと、頭痛や肩こり、吐き気など全身への影響が出てくる可能性もあるため、目の疲れを溜めないように気を付けましょう。
また、屋外で過ごすと光誘導性ドーパミンが網膜内で放出されて眼軸長が伸びるのを抑制し、近視の進行を抑えるとも考えられています。
子どもの近視が増えている

以前までは小学校高学年~中学生くらいに近視が始まり、成人前後までに進んでいくケースが多かったですが、近年はその傾向に変化がみられます。
小学校に入る前、6歳前から症状が出てくるなど、近視の低年齢化が見られるようになってきています。
子どもの近視の理由
子どもの近視が増えた理由は睡眠時間が減った、外遊びの時間が減ったなどが挙げられます。
夜までの塾やゲームなどで寝る時間が遅くなり、睡眠時間が短くなってしまうと、明るい日中の活動よりも夜や家の中での時間が長くなり、近視になりやすい環境を作ってしまいます。
睡眠不足や夜更かしなどで生活のリズムが崩れると、成長の妨げになってしまう可能性もあるでしょう。
また、電子機器の普及により外遊びの機会が減り、屋内での活動が増えたことも理由として考えられます。
通学時間以外は学校の校舎や家の中で過ごす子どもが多く、外で遊ぶ時間が少なくなり日光を浴びる時間も少なくなっているのです。
子どもの近視の危険性
近視になる年齢が早ければ早いほど、将来的に近視が強くなる可能性が高くなってしまいます。
個人差はあるものの、成長期と共に眼軸(目の奥の長さ)も伸びますが、長く伸びすぎてしまうと近視が強くなります。
早い年齢で近視になると、成長期でさらに眼軸が伸びて、近視が進んでいくことになるのです。
眼軸が伸びると眼球も伸び、網膜などの目の組織が引き伸ばされて薄くなってしまいます。
眼球が変形するほど眼軸が長くなると、強度近視から病的近視になってしまう可能性が高まります。
病的近視で薄くなった網膜などは弱くなり、機能が低下して、緑内障や網膜剥離などの病気にかかりやすくなり、失明のリスクにもなりかねません。
子どもの近視は、予防や進ませない対策が重要なのです。
近視を悪化させない方法6選

近視になるのは眼軸が伸びてしまうからで、一度伸びてしまった眼軸は元に戻ることはありません。
『近視が回復した』というのは、仮性近視という一時的にピントが合わせづらくなっていた状態の場合だけです。
近視は防止と悪化を防ぐ対策が大切なため、ここではその方法を6つ紹介します。
参考にして実践すれば、どちらに対しても効果が期待できる方法です。
見る対象から30cm以上離れる
近い位置で物を見続けると、ピントを合わせるために調整しようとして目に負担をかける時間が長くなってしまいます。
読書や勉強、スマホやパソコンの画面などを見るときは、30cm以上の距離をあけるようにしましょう。
それではぼやけて見えないという場合は、近視が始まっているかもしれません。
見える距離まで近づくよりは、メガネをかけて距離を保つ方が有効です。
また、電子機器の場合は手元よりもテレビやモニターに映した方が見やすく、適度な距離が保てます。
正しい姿勢
パソコンやスマホで作業をするときは、正しい姿勢を保つように心がけましょう。
姿勢が崩れていたり、寝転んだりして本やスマホを見ようとすると、対象と目の距離が縮まってしまいがちです。
また、左右のピント調節の力が違っていると、視力に左右差が出る可能性もあります。
背筋を伸ばして背中と背もたれの間にはこぶし1つ分くらいの間を開けて、両足を床に付けて座りましょう。
休憩を取る
同じ作業を何時間も休みなくするのは避けて、休憩を取って目を休ませてください。
30分に1回は、対象から目を離して5分ほど休憩します。
このとき20秒以上遠く(6m以上が良い)を見るようにして、遠距離にピントを合わせましょう。
景色や遠くのビルを眺めるなども良いですが、室内でも2mほどは離れた場所に視線を移すようにしてください。
目の疲労を感じたときは、何度かまばたきをしてみたり、目をぐるっと回して動かしてみたりしてほぐしましょう。
また、休憩時に蒸しタオルやホットアイマスクなどで目元を温め、血行を良くするのも効果があります。
普段の生活でも、意識的に遠くを見る時間を作るようにするのもおすすめです。
明るい場所で作業する
特に、読書や勉強は部屋の照明を明るくする他に手元を照らす明かりを追加しましょう。
手元の照明があれば、自分の影で暗くなることもなくなり、目の負担が軽減されます。
手元の明るさを保てるように、LED電球で700~1000ルーメン、白熱電球で40~60W、蛍光灯で15~20Wの照明があると良いです。
電球に表示されている明るさを確認して、これらの数字以上の照明を準備してください。
また、部屋の電灯の色が電球色だと、少し暗く感じることがあるため、細かい作業をする部屋は昼光色など明るさを感じられる色に変えるのがおすすめです。
仕事上どうしても暗い場所での作業が必要だという場合以外は、明るい部屋にするように工夫してみましょう。
屋外に出る
屋外で過ごす時間を1日2時間以上、少なくとも40分は取るようにすると、近視の防止や抑制の効果が期待できます。
両親共に近視であっても、屋外活動が多い子どもは近視になるリスクが下がります。
屋外で活動するということが重要で、外遊びでなくても構いません。
真夏の外遊びは熱中症などのリスクもあるため、無理せず日陰やベランダなどで日光を浴びるだけでも良いでしょう。
直射日光を浴びて紫外線の影響を受けすぎないように、日焼け止めや水分補給、UVカットグッズなどで対策は必要です。
屋外にいる時間が1日のうちに2時間以上が理想ですが、大人の場合通勤や営業回り、子どもの場合は通学や体育の授業などで、合計して2時間を目指しましょう。
また、晴れた日だけでなく、曇りの日でも効果はあるため、散歩などで積極的に外に出るのがおすすめです。
睡眠の質を上げる
質の良い睡眠をとっていると、近視の予防につながります。
子どもの強度近視は、睡眠時間が遅かったり、短かったりするのも原因の1つと考えられています。
日中に屋外で日光を浴びて、夜は早めに就寝準備をするなどで、早寝早起きを心がけた生活リズムにしていきましょう。
また、スマホやゲーム、パソコンなどの電子画面からのブルーライトは体を目覚めさせてしまうため、眠る直前まで見るのは避けるのがおすすめです。
就寝時間の1時間ほど前には終わるようにして、体を眠りに向けて整えて、良い睡眠を取るようにしてください。
眼科でできる近視を止める方法とは

進行している近視を止めるには、眼科での治療が必要です。
特に未成年のうちは、成長と共に近視も進行してしまうため、進行が止まらないと悩んでいる方は、まずは眼科を受診しましょう。
ここでは眼科で近視を止める、進行を抑制するためにする治療方法を紹介します。
オルソケラトロジー
就寝時にハードコンタクトに似たレンズを装着して、角膜を平らに矯正することで、日中は裸眼で過ごせるように調整する治療方法です。
毎日の着用が必要で、数週間着用しないと角膜が元の状態に戻り、視力も元に戻ります。
角膜の状態を矯正するため、近視の抑制効果も期待できます。
ただし、軽度から中等度までの近視に適応され、強度近視には向いていません。
手術に抵抗のある人や、日中メガネやコンタクトをしたくない方におすすめです。
大人が装着を手伝える環境ならば小学校低学年からの治療も可能ですが、対応しているかはクリニックによって変わってくるため相談してみましょう。
保険適用外の自費診療となるため費用はクリニックによって異なり、一般的には年間15~20万円ほど必要です。
点眼薬治療
アトロピンという成分は眼軸が伸びるのを抑制することにより、近視の進行を遅くする効果があります。
使用されるのは、アトロピンを低濃度(0.01%と0.025%の2種類がある)に調整した「マイオピン」という点眼薬です。
毎晩寝る前に1回の点眼を少なくとも2年間続けることにより、近視の進行が抑制される効果が期待できます。
適応年齢が6~12歳の子どもで、軽度から中等度までの乱視が少ない近視の方に対応できます。
眼科の受診でマイオピン点眼の治療を選択した場合は、保険適用外となるため医師とよく相談して治療を受けましょう。
手術
手術は近視抑制効果ではなく、近視を止める矯正方法となります。
成長期の子どもは視力が変わる可能性があるため、手術は適応されません。
レーシックとICLなどがあり、どちらも自費診療となります。
レーシックはレーザーで角膜を削って屈折力を調整し、視力を矯正する手術です。
手術の性質上、術後に元に戻すことはできません。
ICLは眼内レンズとも呼ばれ、目の中にソフトコンタクトレンズのような特殊なレンズを挿入する手術です。
レンズにはさまざまな種類があり、自分の目の状態に合ったものを選べます。
見え方に違和感があったり、将来的に目の病気になったりしたときは、レンズを取り出して元の状態に戻せます。
どちらも手術である以上、合併症のリスクがあることを承知の上で、医師と相談して自分に合っていると納得して手術を受けましょう。
まとめ
近視を予防するには、日常生活の見直しが大切です。
遺伝だからと諦める前に、環境的要因を改善するように工夫してみましょう。
無意識のうちに近視を進めてしまうような環境だった場合は、改善することで近視の抑制につながることもあります。
そして、子どものうちに近視を発見したら、きちんと眼科を受診し適切な治療を受けることが重要です。
強度近視や病的近視を予防するためにも、生活の見直しと眼科への定期的な通院をして、今以上に進ませないことを目指しましょう。
こにし・もりざね眼科は、患者様とのコミュニケーションを大切に、人と人として向き合うあたたかい治療を行っております。
0歳からの視力検査も実施していて、小さな子どもから高齢の方まで、幅広く対応できる地域のかかりつけ医を目指します。
近視の予防方法や抑制方法を検討している人は、ぜひお気軽にこにし・もりざね眼科へご相談ください。