
近視と言えば、近くは見やすいけれど遠くは見にくいという現象がすぐに思いつきますが、近視の原因や近視がどのように進むのかを聞かれたら、答えるのは難しいかもしれません。
この記事では、近視の原因からどう進んでいくのか、子どもの近視が増えている理由、そして近視が進むとどのようなリスクがあるのかを、詳しく解説していきます。
近視の原因を知りたい人、子どもの近視を予防したい人は、ぜひ参考にしてください。
近視とは

近視とは、目に入った光が角膜を通って水晶体で屈折して、通常なら網膜の上で焦点が結ばれて映像として見えるはずが、網膜よりも手前でピントが合ってしまっている状態のことです。
ピントが合う位置が手前であればある程、近視の度合いが強くなります。
人間の目は5m以上離れている物を見るときにリラックスしている状態のため、5m以上の物にピントを合わせてはっきり見える状態を正視と呼び、これが通常の見え方です。
近視の場合は5mよりも手前でピントが合ってしまい見えづらく、どこまで見えるかは個人差があり、近視の進み具合により変わります。
近視になる原因は?

近視の原因のほとんどは、眼軸という目の奥の長さが通常より長いためです。
成長に伴い眼軸が長くなりますが、何らかの影響により目全体の奥行きが長くなりすぎ、水晶体で屈折した光が網膜まで届かず、手前でピントが合ってしまうのが近視の特徴です。
病的近視を除いた眼軸が原因の近視は、凹レンズを使用したメガネやコンタクトでピントが合うように調節して矯正できます。
ただし、角膜や水晶体の屈折異常による近視という可能性もあるため、眼科で検査をしてもらい、自分の近視がどのような種類なのかを把握しましょう。
近視はなぜ起こるのか、はっきりした要因についてはまだ明らかになっていません。
遺伝的な要因と環境的な要因の両方が影響するのではないかと考えられています。
遺伝的な要因
両親や祖父母などの近親者に近視の人がいると、子どもに近視が出やすい傾向があります。
両親のどちらかが近視、または両親どちらも近視の場合は、子どもが近視になる確率が高くなると考えられています。
両親共に近視ではなくても、祖父母や近親者から遺伝するケースもあるでしょう。
ただし、遺伝的な要因があったとしても、子どもが必ず近視になると決まっているわけではありません。
近視になる確率は高いですが、環境的な要因を避けることで近視の進行を予防できる可能性もあります。
環境的な要因
環境的な要因としては、以下のようなものが挙げられます。
- ゲームやスマホ、パソコンの画面を見続ける
- 長時間の勉強や読書
- 薄暗い場所での作業 など
このような環境が続くと、目に負担がかかり近視を進行させてしまう恐れがあります。
近い場所を見続けることで、画面や手元にピントが合っている時間が長くなり、遠くを見ようとするとピントが合わずにぼやけてしまうこともあります。
一時的なものならば、目を休めて時間をおけば元に戻りますが、慢性化してしまうと近視が強くなる可能性があるため注意しましょう。
また、充血やまぶたがぴくぴくする、目の奥が痛いなどの症状は眼精疲労のサインです。
放置すると悪化して頭痛や肩こり、食欲不振などの全身の不調につながるため、時間を決めて休憩を取る、明るい場所で作業する、画面や手元と目の距離を空けるなどに気を付けましょう。
近視になる経緯

今近視の人でも、最初から近視だったわけではなく、成長のどこかの段階で、近視になる方が大半です。
ここでは近視の進み方や近視に気づくサイン、仮性近視について解説します。
近視はどのように進んでいく?
赤ちゃんのときは眼軸が短く、ピントが合いづらい遠視の状態です。
成長につれて眼軸も伸びていき、成長期が終わる頃にちょうど良い長さで止まると正視になりますが、遺伝や環境などの影響によって眼軸が長くなりすぎると近視の状態になります。
小学校低学年~中学生くらいから視力が落ち始め、その後は環境的な要因が影響する場合が多く、年齢と共に近視が進行していきます。
しかし、小学校入学前から近視になるというケースも増えていて、視力低下が早まっている傾向です。
近視になる年齢が早いと将来的に近視が強いとされる-6.00D以上の『強度近視』になりやすく、
近視が進行しやすい環境を改善するなどの対策をしましょう。
また、大人になってから近視になる場合は、遺伝的な要因と仕事や生活などの環境的な要因が影響してきます。
長時間パソコン画面を見る、細かい作業に集中する、暗い場所での作業など、目に負担がかかる仕事に就いている方は、目が疲れたと感じる前に休憩を取るなど、眼精疲労が慢性化しないように対策をしましょう。
近視に気づくサイン
「近視になったかも?」と自覚症状が出る段階では、すでに視力が落ちてしまっている可能性があります。
- 黒板の文字が判別できなくなった
- 向かいから歩いてくる人の顔が見えない
- 周りの人から目を細めて見ていると指摘される など
前までは見えていた距離が見えづらくなったと気づいたときには、近視になっているかもしれません。
学生ならば毎年の健康診断で視力検査があり、再検査のお知らせをもらって近視かもしれないと気づくこともあるでしょう。
大人になってからは、毎年の視力検査をしていないこともあり、視力が落ちていると気づきにくい可能性もあります。
子どもの年齢が小さい場合は1つのことに集中していられない、親の表情の変化がわかりづらく反応が薄いなどで近視かもしれないと気づくこともあります。
近視の前兆を感じたら、早いうちに眼科を受診して診断を受けましょう。
仮性近視とは?
仮性近視とは、近視のように遠くが見えにくくなりますが、一時的に目の筋肉が緊張したまま戻らなくなり、ピント調節ができなくなっている状態です。
仮性という名称のように一時的な近視であることが多く、適切な治療をすれば回復する可能性があります。
目の緊張状態は、近いところや画面などの一定の距離を見続けたときに起こる可能性があります。
小学校低学年くらいに視力検査で近視が疑われた場合は、仮性近視かもしれないため眼科で検査を受けてください。
ただし、原因の改善を怠ったり、治療しないで放置している期間が長かったりすると、仮性ではなく本当の近視になってしまうため注意しなければなりません。
近視を悪化させないためには
眼軸が長くなり近視になってしまうと、元には戻らず近視は自然に治ることはありません。
近視にならないように予防することが大事ですが、なってしまった場合は近視の進行を遅らせてこれ以上悪化させない対策を知っておきましょう。
以下のような、近視になりやすい、または近視が進む理由になる環境的な要因に注意して過ごしてください。
- 近い場所を見続けない
- 長時間の勉強や読書は休憩を取る
- 暗い場所は避けて明るい場所で作業する など
また、寝転んで読書をしたり、崩れた姿勢で作業したりすると、近視が進行しやすくなる可能性があります。
正しい姿勢で座り、画面や本から30cm以上目線を離すように心がけましょう。
暗い場所は避けて部屋の明るさを保ち、時間を決めて休憩を取って目を休めてください。
時々遠くを見つめて目の緊張をほぐすのもおすすめです。
子どもの近視が増加している?

子どもの近視が増えていたり、早い時期から近視になる傾向があったりする現代では、子どもを持つ親としては理由と対策を知っておきたいところです。
遺伝的な要素に加え、環境的な要素が影響している可能性があります。
子どもの近視が増加している理由
子どもの近視が増加しているのは、以下の理由が考えられます。
- ゲームやスマホなどの画面を近い距離で見続ける時間が増えた
- 塾や遊びなどで寝る時間が遅くなり睡眠時間が少なくなった
- 屋外で遊ぶ機会が減って日光を浴びなくなった など
このような条件に当てはまっていると感じたら、近視になる可能性が高まるため注意し、対策をしましょう。
ゲームやスマホがすべての原因というわけではなく、使い方次第です。
子どもの近視を予防する
子どもの近視を予防するためには、近視が進行する理由となる環境を改善することが大切です。
近視の予防には近い距離で画面を見続けるのは避け、30cm以上の距離を空けるのが有効な方法です。
そして、30分に1回は目を休めるために遠く(6m以上が望ましい)を見るように休憩を取るのをおすすめします。
また、昼間に屋外で2時間以上活動すると、体内のリズムが整って睡眠の質が向上します。
難しい場合はベランダに出て外の空気を吸う時間を作るなどでも、屋内にこもっているよりは良いでしょう。
ただし、真夏の直射日光を浴び続けるのは熱中症などの危険があるため、熱い季節は無理をせずに日陰で少しの時間過ごすだけでも構いません。
近視のリスク

近視になったらメガネやコンタクトで視力を矯正すれば、日常生活に支障がないと思うかもしれませんが、近視が進むと将来的に目の病気になる確率が高まってしまいます。
ここでは病気に対する近視のリスクについて解説していきます。
近視は病気になりやすい?
近視がない場合とある場合を比べると、近視の度数が高いほど目の病気になるリスクがあります。
眼軸が長くなりすぎてしまうと、近視が強くなり『強度近視』という状態になります。
強度近視になると、網膜や視神経などの組織が後方に引き伸ばされて薄くなることにより、神経や細胞に負荷がかかり、病気の可能性が上がってしまうのです。
白内障や緑内障、周辺部網膜変性、網膜剥離、近視性黄斑症などの目の病気は、弱度近視から強度近視になるにつれ、リスクが上がっていく傾向があります。
将来病気にならないためにも、子どものうちから予防や進行の抑制をすることが重要です。
強度近視
強度近視とは、メガネやコンタクトを作る際に使用されている屈折度数という基準で-6.0D以上の近視のことで、視力で表すと0.1以下です。
近視が進行して眼軸が伸びていき、-6.0D以上になると強度近視と診断されます。
眼軸が伸びて長くなると眼球も大きくなるため、眼球突出、いわゆる出目と呼ばれる症状が見られる場合もありますが、バセドウ病などの病気からくる症状とは違います。
強度近視になる原因としては遺伝的な要素があると考えられていて、両親や祖父母などの近い血縁に強度近視の人がいると、子どもが強度近視になる可能性が高いです。
メガネやコンタクトの矯正は、かなり強い度数が必要となり、目への負担がかかってしまいます。
また、強度近視がさらに進行すると『病的近視』につながる可能性もあるため、近視を進行させないように眼科へ相談しましょう。
病的近視
病的近視になると、度数に関わらず眼底などに影響してさまざまな合併症を引き起こす可能性が高くなります。
病的近視は眼球が後ろ側に伸びて歪んだ状態になりますが、症状の出方は人それぞれです。
メガネやコンタクトで矯正できないほどの場合もあり、近視や目の病気の程度により失明にいたることもあります。
遺伝や環境の要素もあると考えられていますが、はっきりとした原因やなりやすい人などは、まだ解明されていません。
近視が進行する前に、眼科で定期的に検査を受けることで、早期発見できれば失明のリスクを回避できる可能性が高まります。
まとめ
近視の原因は、遺伝的な要素と環境的な要素の両方が影響していると考えられています。
ただし、両親共に近視だったとしても、子どもが近視になると決まっているわけではないため、環境的な要素を取り除いて予防するように生活習慣を見直すことが大切です。
近視を進行させないため、負担を減らして目を休ませるように心がけましょう。
また、眼科で定期的に検査を受けて、度数の確認だけではなく目の状態を確認して、病気や近視の悪化の兆候を見逃さないようにしてください。
こにし・もりざね眼科は、患者さまと向き合う診療を大切に、あたたかい治療を心がけております。
0歳からの視力検査も対応でき、地域のかかりつけ医として保護者の方と共にお子さまを見守っていきます。
近視に悩んでいる人、病気について知りたい人は、ぜひお気軽にこにし・もりざね眼科までご相談ください。