
緑内障は、初期から中期、後期と進行するにつれて、症状が変わってきます。
自覚症状として、視界が欠ける・視野が狭くなるなどが挙げられますが、これらは症状が進んでから感じることがほとんどです。
しかし、緑内障は早期発見が重要な病気のため、初期のうちに治療を開始するのが重要です。
この記事では、緑内障の種類や初期症状、早期発見のコツなどを詳しく解説します。
緑内障を理解して、前兆を見逃さずに早期発見・早期治療をするための参考にしてください。
緑内障とはどういう病気?

緑内障とは、何らかの要因によって映像情報を脳に伝達する視神経が障害されて、映像が上手く伝わらなくなった結果、視界が欠けたり、視野が狭くなったりする目の病気です。
ダメージを受けた視神経は再生できず、視力の回復も望めないため、今見えている視界を維持するのが緑内障の治療目的になります。
40代以降に発症率があがり、日本では失明(視力障害)の原因第1位は緑内障で、約20%を占めるほど身近な目の病気です。(参照:平成17年度厚生労働省 網膜脈絡視神経委縮症調査研究班報告書)
このため、緑内障は早期発見が重要となり、適切な治療をできるだけ早く開始するためにも定期検診が欠かせません。
緑内障の原因
緑内障の原因は、はっきりとはわかっていません。
加齢や眼圧の上昇もひとつの要因ではあると考えられていますが、若年層でも発症するケースがあったり、眼圧が低くても緑内障になったりする方もいるため、原因とは言い切れないでしょう。
他にも、遺伝や強い近視、糖尿病、高血圧や低血圧、睡眠時無呼吸症候群など、緑内障になりやすいとされている要因があります。
また、眼圧の上がりやすい生活習慣があると、緑内障の発症率があがるとも考えられています。
例えば、高い枕の使用やうつぶせで寝る、長い時間うつむく姿勢が続く、喫煙、無酸素運動が多いなどの生活習慣は、眼圧が上昇しやすいため注意が必要です。
緑内障の種類

緑内障には大きく分けて2つの種類があります。
それぞれ仕組みが違い、初期症状に違いがあるため、緑内障の疑いがあると診断された場合には、自分がどのタイプなのかを知っておくのが大切です。
原発緑内障
原発緑内障とは、原因がはっきりせずに緑内障の症状が出てくる種類です。
一般的に緑内障と呼ばれるのは原発緑内障で、過半数を占めます。
原発緑内障の中でも、さらに開放隅角緑内障と閉塞隅角緑内障に分類されます。
開放隅角緑内障
開放隅角緑内障は、眼球を満たしている房水を排出する部位である隅角より先の部分が、閉じたり詰まったりしているため、排出が滞ってしまい眼圧が上昇して、視神経が障害を受ける種類です。
房水が眼球を満たして循環することにより眼圧が一定に保たれているため、排出がうまくできなくなると房水が溜まってしまい、眼圧の上昇につながります。
緑内障の中で最も多い種類で、症状がゆっくり進むのが特徴です。
また、眼圧が正常値(10〜20mmHg)の範囲内でも発症する正常眼圧緑内障も、開放隅角緑内障に含まれています。
視神経がどれくらいの眼圧に耐えられるのかは個人差があり、正常値を超えるほど眼圧が高くても緑内障を発症しないケースもあります。
正常隅角緑内障は若年層の発症率が上がっているため、40代になっていなくても注意が必要です。
緑内障のリスク要因がある方は、定期的にクリニックで検査を受けることをおすすめします。
閉塞隅角緑内障
閉塞隅角緑内障は、隅角が狭まったり閉じたりして房水が排出できなくなり、眼圧が上昇してしまう状態です。
急性と慢性があり、慢性は症状がゆっくり進んでいきますが、急性に変化する場合があるため注意しなければなりません。
急性緑内障は急激に眼圧が上昇して(40〜80mmHg)酷い充血や目痛、かすみ目、頭痛、吐き気、嘔吐などの症状を伴うものです。
目に現れる症状以外の頭痛や吐き気などは他の病気が疑われる可能性も高く、急性緑内障発作を見逃してしまうこともあります。
治療が遅れてしまうと、一晩~数日で視力を失ってしまう場合があるため、目の痛みがあることを必ず医師に伝えてください。
急性緑内障発作の治療は、点眼薬や点滴で急激に上がってしまった眼圧を一旦下げてから、再発防止のためにレーザー治療や手術を行う場合もあります。
急性緑内障は、一刻も早く眼圧を下げる治療が必要です。
目に関係する前兆がある場合は、すぐにクリニックを受診してください。
続発緑内障
原因が不明の原発緑内障に対し、続発緑内障は原因がわかっている緑内障の種類です。
糖尿病や極端な高血圧、低血圧、他の目の疾患や術後、外傷によるもの、ステロイド薬によるものなど、緑内障を発症する原因がわかっていて、眼圧の上昇につながる場合は続発緑内障に分類されます。
原発緑内障と比較すると割合は少なくなりますが、リスク因子がある方は注意してください。
外傷性の緑内障は、傷を受けた直後に症状が現れることもありますが、傷自体が治っても数ヶ月〜数年後に症状が現れるケースがあります。
眼球や目の近くに傷を受けた場合はクリニックを受診して定期的な検診を続ける必要があるかを確認しましょう。
緑内障の症状

緑内障の症状がどのように進むのか、見え方がどう変わるのか、知っていれば不安にならずに備えることができるでしょう。
一般的な緑内障は、初期と中期、後期で自覚症状の有無が違います。
ここでは、進行の度合いによって緑内障の症状はどう変わるのか、詳しく解説します。
初期の症状
緑内障は初期の自覚症状はほとんどなく、発症に気づかない方が多い傾向があります。
急性以外の緑内障は少しずつ症状が進むため、見え方にあまり変化が感じられず自分で気づくことが難しいです。
片目に発症した場合は、見えているもう片方の目で欠けた視界を補うため、症状に気づくのが遅れるケースがあります。
また、両目同時に発症したとしても欠損する部分は違い、欠けた箇所をそれぞれの目が補うことで通常通りに見えているため、気づきにくいでしょう。
緑内障が初期で発見されるのは、兆候がなくても定期的に検診を受けていたり、健康診断や他の目の疾患で偶然発見されたりする場合です。
中期の症状
緑内障が発症して中期頃になると、視野が欠けている範囲が広がってきますが、自覚するまでに至らない場合もあります。
左右の目の欠損部分が補い合っていると、「少しかすむかな?」程度で気づかないケースも少なくありません。
ただし、症状が進むと日常生活に支障をきたすほどに視界が欠けてくることも多くなります。
緑内障の症状の多くは、周辺から中心に向かって視野の欠損が広がっていくため、視界の端が見えづらい状態です。
見え方がおかしい、視力が落ちた気がするなど、少しでも変化を感じたらクリニックを受診し検査を受けてみましょう。
また、中期頃でも自覚症状があまりないと治療を中断してしまう方が多く、少しずつ症状が進行しているのに気づかないことも少なくありません。
治療を続けていれば進行が抑えられる可能性が高まるため、自己判断で治療を中断せずに、病状に不安がある場合はクリニックへ相談してください。
後期の症状
緑内障の後期になると、視界の欠損部分がかなり広がり、見えている箇所が狭くなります。
左右の目で映像情報を補うのが難しくなり、急に見えなくなったと感じる方もいるかもしれません。
症状が進んでいる後期の時点では、自覚症状がない方はほとんどいないでしょう。
視界の欠けや視野の狭まりに加え、視力自体も低下してくるため、日常生活が思うように過ごせなくなったり、車の運転や機械の操作などに影響が出たりします。
治療により進行を抑えるのが重要で、後期の段階で放置し続けた場合は、失明(視覚障害)に至る可能性があります。
完全に視力を失う前に、見え方がおかしいと感じたらすぐに眼科を受診してください。
緑内障を早期発見するためには

緑内障は早期発見が重要な病気です。
緑内障の症状がなるべく進まないうちに治療を開始できれば、視野の欠損や視界の狭まりなどの進行を遅らせ、現在の見え方を維持できる可能性が高まります。
早期発見のために、以下のようなことを意識して過ごしましょう。
定期検診を受ける
40代以降になると緑内障の発症率があがるため、定期的に検診を受けるのがおすすめです。
初期症状があまりなく自覚が難しい緑内障を早期発見するためにはクリニックでの定期検診が欠かせません。
緑内障の検査はクリニックによって異なり、眼圧検査や視野検査、隅角検査、画像診断などさまざまな項目がありますが、眼底検査を含む検査が必要です。
特に、光干渉断層計(OCT)を使用した検査は、肉眼で判別できない詳細な画像の撮影が可能なため、緑内障の早期発見に役立ちます。
糖尿病を患っている方は眼科検診が推奨されているため、定期的な検査を受けることで早期発見の可能性があります。
しかし、緑内障の発症原因になり得る疾患や自覚症状がない場合は、なかなかクリニックを受診する機会がないかもしれません。
40歳を過ぎたら、目の病気や視力に関する症状がないとしても、緑内障の兆候をチェックをするために、定期的にクリニックで検査を受けるのが重要です。
セルフチェックをしてみる
自宅でできるセルフチェックを試してみるのも、視力や視界の変化に気づきやすくなり、目の健康を意識するのに役立ちます。
定期検診で「緑内障の疑いはない」と診断されたとしても、時間が経てば変わるかもしれません。
時々片目ずつを隠しながら物や文字を見て見え方の変化がないか確認したり、緑内障のセルフチェックができるホームページやアプリを利用したりしてみましょう。
ただし、セルフチェックは緑内障の診断ができるわけではないため、少しでも変化を感じたらクリニックを受診して検査を受けてください。
眼科を受診した際に緑内障をチェック
眼科を受診した際には、緑内障の発見が目的ではなくても、「緑内障になっていないか」を医師に聞いてみましょう。
眼鏡やコンタクトレンズを新調する際の視力検査や、目の不調などでクリニックを受診する機会を逃さずに、緑内障のチェックも意識してください。
定期検診に通うのが面倒に感じている方も、他の症状でクリニックに行ったついでに検査を受けるのならばやってみてもいいと思えるかもしれません。
緑内障の発見は早ければ早いほど症状の進行を抑制する効果が期待できるため、定期検診を待つ間に受診の機会があればその都度確認して、兆候を見逃さないようにしましょう。
健康診断で緑内障の疑いがあったらすぐに受診を
全身の健康診断や人間ドックなどで、視力を含む目の検査の項目がある場合、緑内障の疑いがあると診断されることがあるかもしれません。
検査結果により再検査の指示があったら、すぐにクリニックで緑内障の検査を受けてください。
初期の状態で発見できれば症状の進行を抑える治療を早く開始して、視界を維持できる可能性が高まります。
自覚がないから、まだ大丈夫、などでクリニックを受診しないまま放置してしまい、実際に視界に影響が出てからでは、視力を取り戻すことはできません。
緑内障の疑いがあるという時点で詳しい検査をして、治療を開始しましょう。
まとめ
緑内障は初期には自覚症状を感じにくく、視界がおかしいと気づいたときには中期から後期に進行してしまっている場合が多い病気です。
障害を受けた視神経は元に戻ることはないため、一度欠けた視界や落ちた視力が回復することはありません。
緑内障の治療は、現在見えている範囲を維持する目的で行われるため、少しでも早く治療を開始できるように早期発見がとても重要です。
定期的に眼科検診を受けたり、他の治療の際に兆候がないか医師に質問したりして、緑内障の発見ができるように意識しましょう。
こにし・もりざね眼科は、子どもから大人まで目に関する相談がしやすく、目の健康のお手伝いができる地域のかかりつけ医を目指します。
緑内障の早期発見に役立つ光干渉断層計(OCT)を使用した検査も行っております。
定期検診や緑内障についての疑問など、お気軽にこにし・もりざね眼科へご相談ください。