
ドライアイは目のさまざまな症状を引き起こす疾患であり、ものの見え方にも異常をきたす可能性があります。
場合によっては生活に支障がでるケースがあるため、早めに眼科を受診して適切な処置を受けることが大切です。
この記事では、ドライアイで視力が低下すると思われる理由や、ドライアイの予防法について紹介します。
ドライアイが疑われる症状がある人や、視力が変わっていないのに目が見えづらくなったと感じる人は参考にしてください。
ドライアイは視力を低下させる?

ドライアイは実用視力を低下させ、目がぼやけたりかすんだりする原因になるため、人によっては視力が低下したと感じるでしょう。
厚生労働省による日本のドライアイの定義と診断基準の改訂(2016年版)では、涙液層が短時間で破壊されるBUT短縮型ドライアイの症状として、実用視力の低下を挙げています。
実用視力とは、視力検査で測定される視力とは異なり、日常生活を営むなかでの実際のものの見え方を表す視力です。
そのため体調や天気、光の角度などの影響で見え方が変わる可能性があります。
ドライアイが原因で実用視力が低下している場合、実際に近視や遠視になっているわけではありません。
実用視力は通常の視力検査と同様、眼科で測定が可能で、生活するうえで必要な視力がどれくらいあるのかや、その視力をどの程度維持できるかなどを詳しく調べられます。
実用視力が低下することで生活に支障をきたす可能性が高くなるため、早めに眼科を受診して適切な治療を受けることが大切です。
ドライアイで実用視力が低下する理由

ドライアイが実用視力を低下させる原因には以下のものがあります。
視界がぼやけて見えるため
ドライアイの症状である視界のぼやけは、実用視力の低下につながります。
涙の量が減って乾いた目には負担がかかりやすく、目や全身の疲労感を引き起こす原因の一つです。
その結果、目のピント調節機能がうまく働かず、ぼやけて見える原因になります。
目がぼやける場合、白内障・加齢黄斑変性・ぶどう膜炎などの目の病気が隠れている可能性も懸念されるため、放置せず眼科を受診しましょう。
光が眩しく見えるため
ドライアイによって光が眩しく見える症状が現れると、他のものが見えづらく感じるケースがあります。
目の表面が傷つくと光が乱反射するため、強い光ではないのに極端に眩しく感じたり、他の人と同じ光景を見たときに自分だけ眩しいと感じたりしやすいです。
ドライアイ自体が光を眩しく感じさせるだけではなく、ドライアイによる睡眠への影響や疲労が、視覚を敏感にする可能性も考えられます。
光が通常よりも眩しく感じる場合は、車の運転の際に危険を伴う可能性があるほか、角膜炎や結膜炎を発症しているリスクがあるため、眼科で適切な検査・治療を受けることが重要です。
ドライアイを放置するリスク

ドライアイを放置すると、実用視力の低下以外にも以下のリスクがあります。
目以外にも症状が現れる
ドライアイは、放置すると目以外にも影響を及ぼすおそれがあります。
ドライアイは眼精疲労の原因になり、自律神経の乱れを引き起こすことで肩こりや頭痛などの症状を引き起こす可能性があります。
片頭痛がある人はドライアイが原因である可能性があるため、眼科を受診する場合は医師にその旨を伝えることが大切です。
精神面への負担につながる
ドライアイが日常生活に支障をきたすと、精神面に負担がかかる可能性があります。
目の疲れや見えづらさがあると、集中力が低下したりストレスを感じたりします。
またドライアイが身体の調子を悪くすると睡眠の質を下げ、さらに不調が重なる恐れもあるため、QOLが低下する前に改善することが大切です。
角膜感染症を引き起こす
ドライアイを放置すると、角膜感染症を引き起こすリスクが懸念されます。
角膜感染症は、角膜が感染によって炎症を起こし、痛みや充血を伴う疾患です。
ドライアイでは涙が不足するため、細菌やウイルスの目への侵入を防ぐ機能が正常に働かなくなります。
感染性の角膜炎には迅速で集中的な治療が要されるため、ドライアイは放置せず早めに眼科を受診することが大切です。
ドライアイを引き起こす要因

ドライアイを引き起こす要因には、以下のようにさまざまなものがあります。
- 加齢
- パソコンやスマートフォンの画面の凝視
- 空気の乾燥
- ストレス
- コンタクトレンズの装用
- まぶたのメイクや汚れ
- 薬の副作用
- 昼夜逆転の生活
- 偏った食事
- 運動不足
- 内科的疾患
ドライアイは目の水分が不足したり、潤いが失われやすくなったりする疾患ですが、発症にはさまざまな要因があります。
年齢に関わらず発症する可能性がある一方で、加齢によってリスクが高まるとされていて、特に40歳を過ぎた女性に多くみられます。
また不安定な生活リズムや偏った食生活をしているとドライアイになりやすくなるため、心身ともに規則正しい生活を心掛けましょう。
ドライアイには、シェーグレン症候群やスティーブンス・ジョンソン症候群という疾患が隠れている可能性があります。
これらの疾患は目以外の全身症状を伴う可能性も懸念されるため、軽く考えず早めに眼科を受診しましょう。
ドライアイで低下した実用視力を回復させる方法

ドライアイで目が見えにくいと感じる場合は、適切な治療を受ける必要があります。
ここからは、ドライアイで低下した実用視力を回復させるための方法を紹介します。
点眼治療
点眼治療は、点眼薬(目薬)を用いてドライアイを治療する方法です。
ドライアイの治療に用いられる点眼薬には、目に潤いを直接補給するタイプ、涙の分泌を促進するタイプ、目の乾燥を防止するタイプなどがあります。
眼科を受診して検査を受けることで、ドライアイのタイプに合わせた点眼薬を処方できます。
涙点プラグ
涙点プラグは、プラグを涙点に挿入することで、涙が流れ出るのを防ぐ治療法です。
涙点は涙の排出口の役割を担い、古い涙が新しい涙と交換される際に通る穴のことをいいます。
ドライアイでは涙の供給量が排出・蒸発する量に追いついていない状態であるため、目の表面が乾き、症状が現れます。
涙点を閉塞すると涙が排出されずに目にとどまるため、目を乾燥から守ることが可能です。
涙点プラグには、シリコン製のプラグを用いる方法と、体温付近で固体になるコラーゲンを涙小管に注入しプラグとして利用する方法があります。
涙の排出量を軽減することで点眼薬の流出を防ぐため、薬効を高める働きもあります。
IPL治療
IPL治療は、光エネルギーを利用してマイボーム腺(まぶたにある皮脂を分泌させる腺)の正常な機能を促す治療です。
光エネルギーにはマイボーム腺で固まった油分を柔らかくする効果があるため、マイボーム腺からの油の供給が不足することで発生するドライアイの改善に効果を発揮します。
IPL治療は、ドライアイに限らず肌の美容治療にも利用される方法です。
温罨法
温罨法はまぶたを温めてマイボーム腺の詰まりを改善する方法で、自宅で簡単に行えます。
市販のホットアイマスクや目元に使えるカイロなどを利用して目元を温めることで、マイボーム腺の油が溶解し、通りがよくなります。
ホットタオルを使用する場合はすぐに冷めてしまう欠点があるため、お風呂に浸かって頻繁に温めたり、冷める前に取り替えながら温めたりするなど、温度が下がらない工夫が必要です。
マイボーム腺の油が溶ける温度は28〜32℃とされているため、これより高めの温度で温める必要があります。
またまぶたの表面だけ温めるのでは効果が得られないため、40℃くらいの温度で5〜10分ほど温め続け、深部まで熱を届けると効果的です。
ドライアイの対策には、目をたまに休ませることも重要であるため、作業の合間に目を温めながら休憩する時間を作るのがおすすめです。
リッドハイジーン
リッドハイジーンは、専用の洗浄剤でまぶたを洗浄し、マイボーム腺から目に油を供給するのを促進する方法です。
固まった油を除去するほか、角質や細菌を取り除いてきれいにする働きがあります。
まつ毛の根元までアイメイクをする習慣がある人は、クレンジングで取りきれずに残ってしまう可能性があります。
リッドハイジーンは、油の詰まりだけではなくこのような汚れによるマイボーム腺の詰まりにも効果的です。
温罨法やまぶたのマッサージと併用するとさらに効果が高まります。
ドライアイを予防するために

ドライアイは、以下の方法で予防しましょう。
目への負担を軽減する
目を酷使する作業をする場合は、目に疲れが溜まらないように負担を軽減する工夫をしましょう。
- ときどき目を休ませる
- パソコンやスマートフォンの画面を至近距離で凝視しない
- モニターは視線が下になるように使用する
パソコンやスマートフォンは目に負担がかからないように使用したり、たまに目を休ませたりすることが大切です。
モニターを見続ける作業が1時間を超える場合は、次の作業との間に10分以上目を閉じて休憩する時間を設けることが推奨されます。
目と画面の距離が近いとドライアイを悪化させる原因になるため、パソコンの場合は少なくとも50cm、スマートフォンの場合は少なくとも20cmは目から離すことを意識しましょう。
また、画面を見る目線が上を向くとまぶたを見開く必要があるため、目が乾きやすくなります。
パソコンやスマートフォンを操作する場合は、目線が下になるように配置して使用しましょう。
乾燥した環境をつくらない
ドライアイを防止するためには、周辺環境の乾燥を防止する工夫をしましょう。
- 部屋の保湿をする
- エアコンの風が直接当たるのを避ける
- コンタクトレンズの使用を控える
- コンタクトレンズを使い方を工夫する
目の乾きを予防するためには、生活する空間の湿度を調節したり、コンタクトレンズの使い方を工夫したりする対策が必要です。
湿度が高い傾向がある夏でも、エアコンの効いた室内は空気が乾燥するため、加湿器や濡れタオルなどを活用して湿度を確保するようにしましょう。
エアコンを使用する場合は、顔に直接送気が当たらないように角度や配置を調節することが大切です。
またコンタクトレンズは、ドライアイの代表的な原因の一つです。
目の表面に張られた涙の膜に乗せて使用するコンタクトレンズは、表面から水分を奪い蒸発を促進するため、目が乾きやすくなります。
ドライアイの予防にはコンタクトレンズを避けることが推奨されますが、使用する場合は低含水レンズや使い捨てタイプを選択したり、帰宅後はすぐに外したりすることが推奨されます。
マイボーム腺の働きを妨げない
ドライアイから目を守るためには、マイボーム腺の働きを妨げないように注意しましょう。
- インラインメイクを控える
- アイラインやマスカラは毎回しっかり落とす
- つけまつげの接着剤がまぶたに残らないようにする
まつ毛の生え際にアイラインを引いたりマスカラをつけたりすると、マイボーム腺の開口部が塞がり、目の潤い維持に必要な油の分泌が阻害されます。
つけまつげの接着剤も同様に、マイボーム腺を閉塞させる原因になります。
そのためアイメイクをする際は、粘膜部分につかないように配慮することが大切です。
またメイクはその都度しっかり落とし、たまにまつ毛専用の洗顔料を使用するなどの工夫をしてまぶたを清潔に保ちましょう。
まとめ
ドライアイで視力低下を感じる原因や治療法を紹介しました。
ドライアイが原因で実用視力が低下すると、私生活に影響を及ぼしたりストレスを感じたりする原因になるため、予防したり早めに眼科を受診したりすることが大切です。
こにし・もりざね眼科では、ドライアイだけではなく、角膜や結膜の疾患であるオキュラーサーフェスを総合的に診断・治療します。
目の症状や患者さんの状態を把握し、適切な治療を提供します。
視力が低下したと感じる原因はドライアイだけではないため、目の不調にお悩みの方は、ささいなことでもぜひ一度ご相談ください。